――大瀧詠一さんのジャケットが思い浮かびます。
経済が豊かだったからでしょうね。文化を育てるのは経済的な余裕も必要なんですよ。CMを1本撮るのも商品名の連呼じゃなくて、イメージ戦略みたいなことをしてみたり。経済が潤っているからできるのだけど、こういう、ちょっとしたことが少しずつ積み重なると時代の空気って変わるんですね。80年代はそれがピークでした。
――そんな中、世知辛い拝金主義がバブルとは違う形で顕在化しているように見えます。
バブルの時とは反対、マイナス方向の拝金主義ですね。バブルの時は「稼ぎたい」。今は「損しちゃいけない」「守りたい」という“逆バブル”。お金には換算できない余白みたいなものが文化になるんです。その文化が非常に希薄になりましたね。皆が「お金」「お金」って言ってね。
――同調圧力はどんどん強まっている気がします。
そういうふうに締め付けないと人々をコントロールできないんでしょうね。政治も経済も本当に余裕がなくなっている。だから、立ち止まって考えるのではなく、皆がその場しのぎの嘘をついて、ごまかしてしまう。昔だったら内閣が吹っ飛ぶような嘘が100個ぐらいあるんじゃないですか。100個もあるとそれが当たり前になっちゃうし、誤ったことでも100回も押し付けられると「しょうがない」と諦めてしまったり、「そういうもんか」と染まってしまう。
――昭和は多彩な色鉛筆の時代だったのに。
崩壊状態ですよ。僕は全ての基本が倫理だと思っている。善いことと悪いことがハッキリしていないと、人間は正しい生き方ができないと思う。強い者が弱い者を守るのは当たり前だけど、今の世の中はそういう簡単なことすら分かんなくなっているんじゃないですか。この間、ユーチューブを見ていたら、ライオンが食べようとしていたシカを、途中からいとおしくなったのか、かわいがり始めた。動物でさえこうなのだから、人間同士はもっといたわり合っていいはずですよ。
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