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[ BooksChannel 厳選の評論家 | 2020年12月25日号 | #中野剛志 | 新書篇 | #くたばれグローバル資本主義 #日本経済学新論 日本の没落 #TPP亡国論 他 |

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中野剛志

評論家

1971年生まれ。元・京都大学工学研究科大学院准教授。専門は政治経済思想。96年に東京大学教養学部(国際関係論)を卒業、通商産業省(現・経済産業省)に入省。2000年よりエディンバラ大学大学院に留学し、政治思想を専攻。05年に博士号を取得。2003年、論文‘Theorising Economic Nationalism’ (Nations and Nationalism)でNations and Nationalism Prizeを受賞。主な著書に『日本思想史新論』(ちくま新書、山本七平賞奨励賞)、『TPP亡国論』(集英社新書)、『国力論』(以文社)、『富国と強兵』(東洋経済新報社)、『目からウロコが落ちる 奇跡の経済教室【基礎知識編】』(KKベストセラーズ)など。


研究活動
イギリス経験論の代表的人物であるデイヴィッド・ヒュームを経済ナショナリストとし、ヒュームからアメリカの経済ナショナリストであるアレクサンダー・ハミルトンへの流れ、ハミルトンを経由して経済ナショナリストの一大学派であるドイツ歴史学派の創始者フリードリッヒ・リストまでの思潮を辿り、ヒュームからヘーゲルを経て、新古典派経済学の創始者の一人とされるアルフレッド・マーシャルが実は経済ナショナリストであることを論証しようと試みた。また、混同されがちな経済ナショナリズムと重商主義はその立場が異なることを、「ネイション」(国民あるいは人々の社会的・文化的・心理的紐帯)と「ステイト」(政府あるいは政治的・法的制度)の両者の基盤の違いを軸に論じた。


主張・言論活動

経済思想
経済ナショナリストによる思想の再解釈を通して、これらの思想の底流にあるのは、理性と思索により抽象化・単純化した思考ではなく、文化や社会慣習、常識の蓄積などをあるがままに掴み取ろうとする解釈学的アプローチであるとする。抽象的な数理モデルや、経済現象を利己的個人に還元した方法論的個人主義など、これらに基づく主流派経済学の非現実的な抽象論を批判し、これに依拠する民営化・規制緩和・小さな政府などの新自由主義的な手法が問題解決に対して失効しているばかりか、軋轢や問題の原因でもあると主張している。
中野は、新自由主義が信奉する自由放任の市場経済は、家族・共同体といった保守が重視する価値を破壊するため、国家・道徳のためにも、保守は新自由主義と手を切るべきだと主張している。

経済史
経済思想史の流れで経済が順調ではない時の傾向として、通常の経済学の議論で見落とされていたものに注目する動きが出てくるとし、危機の時はオーソドックスから逸脱できた国だけが生き残れるとする。


経済論

デフレーションを解決することが最優先課題であるとし、内需拡大こそ重要であるとしている。外需促進は貿易黒字の拡大を伴うが、これは円高を促し国際競争力を失う自殺行為であると指摘する。むしろ、財政出動により内需を拡大することで輸入が増加し、これが円を安くし国際競争力を高めることにつながるとする。すなわち、財政出動による内需拡大こそが円高を止めるとする。マンデルフレミングモデルに対して、デフレ下では金利の大幅な上昇はありえないため、自国通貨高にはならないと主張している。
「くたばれグローバル資本主義」が座右の銘であり、海外からの需要取り込みや国際分業の伸展により経済活性化を目指すグローバル成長戦略論には否定的である。
TPP反対派の代表、TPP反対の急先鋒とも言われており、反TPP論者として注目されている。TPPについて中野は「日本はすでに開国している」「TPPで輸出は増えない」「TPPは日米貿易だ」と持論を展開している。中野が編集した『TPP 黒い条約』ではTPPが内包する問題点を、中野を含め専門家7人がそれぞれ解説している。


論文
藤井聡・中野剛志「マクロ経済への影響を踏まえた公共事業関係費の水準と調達方法の裁量的調整についての基礎的考察」京都大学 都市社会工学専攻 藤井研究室
藤井聡・久米功一・松永明・中野剛志「経済の強靭性(Economic Resilience)に関する研究の展望」RIETI 2012年4月

 

日本経済学新論 (ちくま新書)

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